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『100分 de 萩尾望都』 感想 「半神」

 「半神」萩尾望都 感想
短編の16ページでここまでの作品が作れるのかと唸ってしまう。
萩尾望都という才能の違いを感じると言うか・・、
長くダラダラと終わりない漫画を続けることは、考えたほうがいいよと言い切れる作品だ。

『100分 de 萩尾望都』では、コメンテーター達の話が面白かったのが「半神」かなぁ
有名な作品だけど、余り公には出てこない作品だから
他の人の感想が聞けて珍しかった。


「愛よりももっと深く愛していたよお前を」

「憎しみもかなわぬほどに憎んでいたよお前を」

「私に重なる影、私の神」


身体の繋がった双生児として産まれてしまったユージーとユーシー姉妹の物語。

美しく無邪気で愛される天使のような妹のユーシー。
姉は知的だけど妹に養分を吸われて痩せて黒くて醜いユージー。
妹の世話をしながら勉強して頑張っている醜い姉ユージー。

分離手術をした後に死んでいくユーシーは、醜い私になって私に手を伸ばして死んでいった。

自分の醜さを好きになれないでいるけど、美しいユーシーを愛さずにはいられない。

 

綺麗になった私、誰からも愛されてる自分は、ユーシーなの?ユージーなの?
愛と憎しみは、同じ自分へのものなのか、
美しいユージーが妹への後悔と愛を思う涙。。

 

天使のようなユーシーは、姉のすべての罪をひき受けて死んでいったのかもしれない。
妹の犠牲で生きている私の罪、それは何の罪になるの。。
生きているユーシーを愛せなかった罪なのか・・
私が私でなくなった、美しいユージーになりかわった罪なのか・・。

姉妹の美と醜は、同じものであり、私はユーシーだったし、美しいユーシーは私だった。

双子なので余計に姉妹の葛藤が神秘的に感じます。
そっくりな容姿で美しい双子、
私はどこにいるの?貴方はここにいるの?私はどっちなの?
どちらが父と母に愛されてるの?

 

最後に周囲の人達が見ているのは、美しい妹のユーシーの姿だけ。
そこには、醜い姉のユージーは愛されないままなのです。

今、、美しくなった姉のユージーがいる。
それならば、醜かった私は愛されないままで死んでいったのでしょうか。。
私は醜いユージーの自分のままの姿を愛してあげれなかった。。後悔。。


他者からの見え方を選んだ自分と他者が思っている自分になれたことで
これで良いと思っている美しい姉のユージー。
自分の中の二面性から本当の自分を捨てて誰もが美しいと言われる自分になっていく
醜かった本来の自分はもういない、一種の喪失感。

 

ユージーは生きているけど、
そこにいるのはユーシーの姿で生きているユーシーでユージーはいないのです。

 

最後の最後に鏡に映った自分は、そっくりそのまま美しかった妹のユーシーの姿。
では、醜かった私はどこにいるの?
愛してた私、皆に愛される私はどっち?

いろんな葛藤を抱えて成長していくユージーの涙で終わります。

 

ユージーの涙はいろんな意味があるだろうけど、
でもね、女性は美しい姿に自然となれるのならば、それはそれでいいと思うのです。

フェミニズムからしたら否定になるのかもしれないけれど、
現実社会と折り合いをつけて、より良く生きるならば、美しければ美しくて何の損もないのです。
人類としては、美しい人のほうが全てにおいて人生が得になるんです。

美しいユーシーがみんなに愛されていたようにね。
元も子もない言い方だけど、それが現実でしょ(苦笑

 

最後に美しいユージーが美しい姿のユージーとして生き残ることは、
それでも私は私であって、美しくなれてそれで良かったんだよ。。
美しい私を愛していいんだよ。。と思わせてくれるものなのだと思います。

 

生き残ったユージーがいつまでも醜いままだったら救いが無いよ。
フェミだったらそれこそが正しい考えなのだとなるのかもしれませんが(苦笑。


普通の読者は1人の個人として産まれている人が大多数なので、
双子の不思議や神秘的なシンクロになんだか魅かれてしまいます。

「半神」よりも前の作品でちょっとブラックな「アロイス」という作品がありました。
「アロイス」でも同じような双子の喪失とか双子の憎しみの物語で、
「半神」は、それをより昇華したような美しい作品だと思います。

 

そういえば、萩尾望都作品って双子が良く登場しますね。

脇役でも出てくることあるし、
シャム双生児で不思議な見世物のようで奇妙な感じだったり
同じようで同じで無い双子。

双子って1人で産まれる人達が大多数な世界からしたら異質な者になるけれど、
双子からしたら同じ同調があって同じものが2つは異質じゃないんですよね。
マージナルでは5つ子は同調してて、ママ1人が異質だったなあ。

双生児や三つ子や異質のようで同調のようで
そんなところが萩尾さんには魅かれるところがあるのかなあ・・と思ってしまった。

 


『100分 de 萩尾望都』 母親との葛藤 「漫画 やめなさい」
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『100分 de 萩尾望都』失敗したりダメだったりする子に、心があると思っていないんですよ。
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『100分 de 萩尾望都』SF少女漫画「ここではないどこか」を描く
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『100分 de 萩尾望都』「残酷な神が支配する」萩尾望都の父親の描かれ方
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『100分 de 萩尾望都』 NHK Eテレ 感想1
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『100分 de 萩尾望都』 NHK Eテレ 感想2
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『100分 de 萩尾望都』 NHK Eテレ 感想3
https://www.jmangasuki.com/entry/2021/01/09/165429