「バルバラ異界」 萩尾望都 感想
2006年SF大賞を受賞したSF漫画作品です。
「未来は君らを愛しているか」
舞台は 2052年｡他人の夢に潜入できる｢夢先案内人｣トキオが主人公です。
トキオの息子キリヤのつくったバルバラ。
眠っている子供青羽のバルバラは2150年未来の夢を見てる。
キリヤの夢と青羽の夢が交差してくるようになる。
バルバラと言う不思議な夢を中心に話が進みますが、
他人の夢と火星の夢、過去と未来の夢、バルバラの夢。
カニバリズムとか遺伝子操作をして子供を作るなどいろんな話が山盛りです。
バルバラの人間は不老不死のために心臓を食べている。
心臓を食べるとバルバラプロテインが脳に行って記憶が解き放たれる記憶が継承される。
火星の生命体は１つで記憶を共有できるので個は無くても大丈夫だから。
老化をしない夢を見る子供青羽は、老化して死んでいきます。
謎が謎のような解決したようなしないような謎もある？けど、
最後は、子どもの未来に夢を託して読み終われます。
SFの夢と時が交差している感じが漫画本を確認しながらでないと難しいです。
SF好きには感心するというか、
いろいろ読んでると答えがわからないので「○×なのかな？」と思うこともありますが、
好きなように物語は読んでよいわけですから楽しめます。
ここまで盛りだくさんにいろいろな話題を広げても５巻で終了までにもってきて
話を終わりまで回収できる漫画家：萩尾望都の能力が凄すぎます。
「バルバラ異界」を読んでいて一番、驚いたのが、
主人公トキオの息子のキリヤが唐突に死んでしまうことです。
２番手主人公のような立場なのに途中で死んでしまうとは、まったく思っていなかった。
容赦がなくて驚きましたが、キリヤが死んでもタカという少年と入れ替わって物語は続きます。
それは、火星の生命体は１つで共有できるところで同じとみなすってことからなのか？
父親と息子を描くときに、萩尾さんは、血縁の父子でないものが多いです。
父親と息子には、血縁を必要としない関係を構築する話が多いです。
トキオとキリヤとタカで血縁関係はたいして問題にされません。
萩尾望都作品には「残酷な神が支配する」の父親のような悪人が、
特別怖い人としているくらいで、
多くの作品は、家庭からは子どもが疎外されていても、
父親と子どもの関係は、子どもがドタバタするけどほぼ良好ですし、
「バルバラ異界」でもそうですが、
「トーマの心臓」でも、オスカーの家庭もエーリクの家庭も
血縁関係が無い父親と子が出てきます。
萩尾さんの漫画では、「残酷な神が支配する」の悪である父親は、例外ですが、
ほとんどの父子は、血縁関係なく歩み寄れる良好な関係になっています。
少し不思議なのが「バルバラ異界」の主人公のトキオは、
特別血縁がなくても血縁が無いということに深い悩みがないようで、
結構、あっさりと子供を受け入れているような気がします。
そこら辺は、離婚でずっと離れて暮らしていたから、ほぼ他人、
子供との関係が他人のようで希薄だと言うように設定をしていたと思います。
むしろ、一緒に住むとか信頼する関係に血縁は不要と思ってるような気がします。
父親の存在というよりも、息子を見守る者として父親が書かれていることが多いです。
不思議なもので母子は同志になれないけれど、父子は同志になれるようです。
火星が出てくるので途中でもしかして「スターレッド」の火星と繋がるのかなと思ったりしたけど、
かなり火星の内容が違うからこれはこれで別火星みたいだったのです。
萩尾さんのSF漫画にはよく出てくる火星の話だと一番好きなのが「スターレッド」なので、
「バルバラ異界」よりも、どうしても「スターレッド」が読みたくなってしまいます。
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